もう遅すぎた恋
 俺は彼女が立ち上がった瞬間、手を引き寄せ、抱きしめた。
 俺が好きだった、アイツを。
 でも彼女は、すぐに「やめて!」と言って離れた。
 俺は少し泣きそうになったが何とかこらえて言った。

「ごめん…。いきなり、…ごめん」

 そして素早く散らばっている教材をかき集めると、俺は少し歩いてから立ち止まり、振り返った。
 まだこちらを悲しげな目で見つめている彼女に一言、言葉をかけると俺は笑った。

 彼女は何も言わずに、静かに佇んでいた。



 そして俺は、その場から立ち去ったんだ。
 …叶わなかった初恋の、その相手を残して。
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