もう遅すぎた恋
さよなら、ありがとう。
「…やめて!」
私は、私を抱きしめてくれた愛しい人を突き放した。
すると、真司は少し悲しそうに去っていってしまった。
だってしょうがないじゃない。
…真司の左手の薬指には、輝くリングがはまっていたのだから。
相手がいるのに、軽々しくそんなことしちゃダメでしょ?…先生。
再会するには、もう遅すぎたんだ。
私は鼻をすすって、先生が最後に言った言葉を思い出し、誰もいない廊下で涙をぬぐって笑う。
私がアイツだって気付いてくれた。
それだけでもう、十分だった。
「水泳部だとか、泳げもしないのになんてウソついてんだ、お前」
fin.