もう遅すぎた恋
先にボートに乗っていたそいつの名前は、古賀…真司…。
…先生の、名前。
必死に叫ぶ真司につられて、私は救命ボートに足を踏み入れそうになったが、なんとか踏みとどめて赤ちゃんを抱っこしたお母さんに声をかけた。
『お先にどうぞ』
するとそのお母さんは驚いた顔をして、
『で、でもっ…』
と口ごもった。そんな申し訳なさそうな彼女をみて、私は少し考えた。
そして、笑って言った。
『大丈夫です!私は水泳部ですから!いざとなったら泳げますし!だから…早く行ってください!』
彼女は、『…そ、そうですか…。ありがとうございます…!』と微笑んで、船に乗り込んだ。
それを見て、真司は叫んだ。