空 ~私とあなたの世界~
出会い。
中1 4月
私。矢神 実乃里。
小学校5年生のクラス替えから仲の良い岡崎 愛と一緒に学校に行くのが朝の日課。
なのに・・・クラスが離れてしまった。小学校の持ち上がりと小さな小学校の合同。
初めて一緒のクラスになる人もいる。ただでさえ人見知りなのに、愛と離れるなんて憂鬱。
「そんなに落ち込むことないじゃん。」 さばさばしてる愛は言う。そして愛は言った。
「それよりも・・・。」
「何?」
愛は何か考えてる。何だろう?o
「実乃里。今日職員室行くんじゃなかったの?」
「職員室? あっ!!」
思い出した。それは今日の朝のこと。私は喘息を持っている。その事について母からの書類を渡すことを頼まれていたんだ。
「忘れてた?」
愛は言った。そして
「実乃里ってちょいちょい抜けてるもんね?」
「うるさい。」
こういう、家族でも他人でもない会話をできないと思うと悲しくなる。
「それよりも職員室行っといで。」
さばさばしてるけど優しい愛は言う。
「わかった。」
昨日の入学式後のホームルームで今年新任の今久先生は8時10分から職員会議だと言っていた。だから何かある人はそれまでに来るように。と言っていた。今は、8時7分。はやくしないとちょっとヤバい。
「荷物持ってくから行っといで。」
愛は言うなり私のスクバをもって言った。
「ありがとう。行ってきます!」
私は玄関に入り上靴に履き替え、目の前にある階段を駆け上がった。
“ねぇ”
もしこの時駆け上がらなかったら・・・
もう少しはやくいっていたら・・・
遅く行っていたら・・・
運命は・・・出会うことも・・・恋することも無かったのかな?
゛ドン ゛
階段を駆け上がり踊り場を曲がろうとした瞬間。私の体と誰かの体の鈍い音がした。そしてプラスチックの何かが階段を転がる音も・・・。
私の体は階段の踊り場に倒れ込む姿勢になった。
私は何があったのかわからないまま顔を上げると・・・
「ごめん。大丈夫?」
私の心臓が高鳴る。
「怪我ない?」
私は何があったのかよくわかっていない。それにあの音は何だったのか。今の私の状況を理解してない。立とうとした瞬間。
「ほら・・・手・・・」
名前も知らない・・・何年生かもしらないその人が私の手をとる。
「怪我ない?」
と・・・不器用な感じの中にもある優しさを秘めた
“声”
私の手をとり体を起こしプラスチックの音の正体であろうじょうろを手に取っていた・・・。
私は何かいわなくてはと思い・・・
「大丈夫です。」
と・・・緊張とぶつかってしまったにもかかわらず何をどうしたら良いのかわからず・・・片言の日本語みたいに伝えた。
「ふっ。」
ぶつかってしまった相手はいまさっきの仏教面から笑った顔になった。
私の心臓が高鳴る。
「それじゃ・・・」
と言い残し1階へと降りていった。
何故あの人はじょうろを持っていたのか?
なぜ下がりに行ったのか・・・他学年のフロアには行け無いこの学校の校則なのに。
訳の分からないまま私はその人の降りていく背中を目で見送りその場をあとにした。
「ギリギリだな。」
今年教育大学を卒業しはじめての担任と成った今久先生は言った。そして
「まぁ。良い。提出物は朝に出してくれたから・・・今回は許すが次回からは時間に余裕を持ち来るように。」
私はこのねちねちしつこい青二才の話を聞き、気の無い返事をし、職員室から出た。
「ハァー」
はじめての職員室とあの人の謎の行動が頭のなかを駆け巡っている。あの人が何者かわからない。
でも・・・私のなかでだんだん気になる存在へと変わっていく。もしかして・・・人生初の恋かもしれない。
中学生という小学生よりは大人で・・・でも・・・そこまで大人じゃない・・・背伸びするような恋をしてみたいと、誰だって1度や2度思う。
私の場合小さい頃から喘息で入退院を繰り返し、最近は体調がいいがまた入院生活が起きるのかわからない。
“恋”
はしてみたいが内心怖い。
"臆病なんだ。"
そう階段を下りながら考えた結論。そんなことを考えていた。ふと気付くとこの場所はさっきぶつかった場所。私はその場所に立っている。
「あっ。そこの君!」
私は声した方を見る。
゛ドキン゛
さっきと同じ心臓の高鳴り。
私の前にはさっきぶつかった相手がいる。
「さっきぶつかった時、本当に大丈夫だった?」
彼は私にそう聞く。じょうろは持っていないようだ。
「俺・・・あんまり君が大丈夫か、確認してなかったし、前見てなかったんだ。ごめん・・・」
私はそんなことを言われると思わず、固まってしまった。
彼は不安げな顔で言った。
「どこ怪我した?」
と言い、私の肩を掴んだ。
男の人に免疫の無い私にとって、肩を捕まれたことはとても驚いた。
私が“ビック”と体を揺らすと彼は私の肩からてをはずし、
彼は安心した表情を浮かべる。そのなんとも言えない、優しい笑顔に私は安心した。
「それじゃ。」