それは危険なラブミッション
Mission1

①傍若無人な刺客、現る



遠く西の空が、かすかにオレンジ色に染まりつつある黄昏時。
まもなく秋を迎えるこの時季は、太陽が傾き始めると、気温が一気に下がっていく。

懐かしいような、どこか心が落ち着くような香りを漂わせながら、街を見渡せる小高い丘に建つ霊園で、私は墓石を前に手を合わせた。

この時間にもなると訪れる人はおらず、人の気配がない霊園には、ひぐらしの鳴く声だけが響いていた。


「もう気持ちの整理はつきましたか?」


目をゆっくりと開ける。

後ろから掛けられた住職の穏やかな声に、どう答えようか考えていると、心地良い衣擦れの音と共に肩にそっと手が置かれた。
服を通しても感じる温かさが、やけに私をホッとさせる。


「気持ちの整理というか……両親が亡くなったということの実感はやっとこの頃沸いています」


一緒にこそ暮らしていなかったものの、携帯に頻繁に入った連絡が、この2年パタリと途絶えたことが、二人はもうこの世にいないということを何よりも実感させることだった。

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