それは危険なラブミッション

どうしよう。
これから岬さんに偶然を装って会う算段だというのに。

……仕方ない。
出直そう。
長く大きくため息を吐いた。

でも、どうやって帰ろうか。
いっそのこと、無事な方のヒール部分も折ってしまう?

どうしようかと途方に暮れていると、不意に「莉夏さん?」と声が掛けられた。

振り向いて、思わず息を呑む。
そこにいたのは、思わぬ人というべきか、待ち焦がれた人というべきか、あの岬さんが立っていたのだ。


「――み、岬さん!」

「一体どうしたの?」


妙な体勢で立つ私の足元をしげしげと見る。


「折れちゃった?」

「……はい、そうなんです」


恥ずかしいにもほどがある。
初めて会ったときはドレスをワインで汚し、二度目はヒールの片方が折れるだなんて。
私の第一印象は、きっと“間抜けな女”に違いない。

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