それは危険なラブミッション

けれど、店の奥に応接室なんて気の利くものは設けていない。
スタッフが休憩できるスペースはあるものの、高級ホテルの社長を通すようなところではなく、椅子と呼べるものといったら、それほど広くない店内に売り物のソファが2つと一人掛け用の椅子が数点あるだけだ。

仕方なしに、レジを設置しているテーブルの前に売り物の椅子を引っ張ってきて置くことにした。


「こんなところですみませんが、どうぞ……」

「悪いな」


彼は座ると、「さて、理解はしていただけただろうか」と私を見上げて訊ねた。


「あ、いえ、すみません」


椅子探しをしていて、それどころじゃなかったことは見ていて分かっているだろうに。

東城寺ルイがそれに失望したかのように、小さく息を吐く。

私たちそれぞれに、ちょっとした不満が噴出する気配がした。


「両親が借金していたことも、東城寺ホテルと取引があったことも知りません……」

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