それは危険なラブミッション
「借金があることは、この通り事実だが? 返してもらわねば、こちらとしても困る」
お互いに一歩も引かないまま、じりじりと睨み合う。
負けてなるものかと、どんどん深くなる眉間のしわ。
緊張しているせいか、敗れてはならない勝負に挑んでいるせいか、鼻息まで荒くなっていく。
しまいには、肩が上下するほどに酸素を求めている私。
それなのに、目の前の“取り立て屋”は、優雅に足を組んで涼しい表情のまま私を見つめ続けた。
まるで、避暑地にある別荘のバルコニーで、ロッキングチェアーに腰掛けながらのんびり読書でもしている風情。
なんという精神力の持ち主なんだろう。
こういうシチュエーションでなかったら、賞賛していたところだ。
どのくらい睨み合っていただろうか。
ふと、東城寺ルイが表情を崩した。
何か思い出したか、名案でも思い付いたか、小さく「あ……」と声を上げる。
そして、顎に手を添えてしばらく思案するような仕草をしたあと
「どうしても返せないと言うのなら、」
さっきより幾分か鋭い視線で私を見る。