それは危険なラブミッション
「ある男女の仲を裂けという、そのままの意味だ」
まるで、仕事の一環とでも言うように事務的に告げる。
そこに感情は一切感じられない。
さきほど同様、悪びれる様子が微塵も見られないのだ。
「そんなことはできません」
「簡単なことだろう。男を誘惑すればいいのだから」
――ゆ、誘惑って。
そんなことをして一体何になるというのか。
彼の考えていることが一つも理解できない。
「それなら、あなたがその女性を誘惑なり何なりして、縁談を壊せばいいじゃないですか」
我ながら的を射た提案だ。
私が誘惑するより、勝率だって高いだろう。
何せ、資産家で大企業の社長だ。
性格に難はありそうなものの、その容姿を持ってすれば、その点には目を瞑れる。
「それはできない」
彼が答える。