それは危険なラブミッション

「車はここに置けない」


言いながら大きくハンドルを切り、緩やかなスロープを下った。

……なるほど。
地下駐車場に停めるということだ。
ズラリと並んだ高級車の数々。
ルイのようなセレブが住むマンションらしい。
私には歯も立たないほどの異世界だと、改めて思ってしまった。

ところが、案内されたのは3階。
しかも、エレベーターのパネルは3階から表示されていたから、このタワーマンションでは最下層ということになる。
最上階に住んでいるとばかり思っていただけに驚いた。

部屋の前まで来ると、既にソファを運び込む男の人の姿があって、その後に続いて中へと入る。

さすがに中は一般庶民の住む部屋とは違う。
2人が軽くすれ違うことのできる廊下の先に現れたのは、大きなリビング。
洗練されたインテリアに出迎えられた。
物珍しくて、ついキョロキョロと観察してしまう。

左側にはキッチンとダイニングが配置され、右側には数段の階段の先にドア。
部屋はそれだけだった。
リビングは十分すぎるほど広いけれど、この間取りだと1LDKだ。

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