それは危険なラブミッション
②遠い空の下、半月の元
「そこのソファとあっちのソファ、それから……あのテーブルも2つお願いします」
セレブの気ままな買い物をしているわけではない。
ルイが店のソファを買い占めてしまったので、急きょバリ島へ予定外の仕入れに訪れたのだった。
秋も深まった日本とは正反対の真夏の空気に触れて、自然とウキウキする。
ルイのことも岬さんのことも、しばらく考えずに済みそうだった。
いつもお世話になっている家具と雑貨問屋。
このところは私の好みも覚えてくれて、こちらが言わなくても家具を案内してくれる。
おかげで、それほど手間取ることなく仕入れることができて助かっているのだった。
今回は、2日目にして仕入れ完了。
あとは、送る手続きを取るだけとなっていた。
「今回は随分と家具をたくさん仕入れるね」
そう言うのは、ここのスタッフ羽生(はにゅう)さんだ。
日本人の羽生さんが常駐しているおかげで、インドネシア語はかじる程度の私でも、スムーズに仕入れができている。
35歳独身の男性。
私同様に、ふらりと訪れたこの島で、バリの家具に魅入られたらしい。
すっかり日焼けした精悍な顔立ちは、現地の女性にも人気がある。