それは危険なラブミッション
「シャッターチャンスを逃したな」
「……え?」
「今の顔、最高傑作だった」
「……」
そりゃ、驚いて目を剥いただろうけど、それはひどい言われようだ。
「そう拗ねるな」
「別に拗ねて――」
唐突に伸びてきたルイの手に、思わず息を止める。
その手が私の髪の毛にそっと触れた。
それだけで、全身に甘い痺れが走る。
「髪の毛、ぐちゃぐちゃだな」
それはルイのせい。
そう言いたくても、唇が動かない。
私一人だけ、一時停止ボタンでも押されたみたいだった。
半円の月に照らされたルイが、不意に真顔になる。
髪の毛から戸惑いながらゆっくり降りてきた手が、顎の下で止まった。
……ルイ?
何かが起こる予感が、私の鼓動を大きく高鳴らせる。
いつもと違う色を見せるルイの眼差しから目が離せない。
これ以上、心臓が持たないかもしれない。
そう思ったところで、そっと持ち上げられた顎。
近づくルイの顔に目を閉じる。
唇が重なった瞬間、遠くに聴こえていたガムランの音が聞こえなくなった――……。