それは危険なラブミッション
③破談宣告は突然に
「そこのキミ、申し訳ないが、席を替わってもらえないか?」
離陸まであと少し。
エコノミークラスの窓際の席で、大人しく飛行機が動き出すのを待っていると、ファーストクラスにいるはずのルイが私の隣のシートにいた若い男性に声を掛けてきた。
「ちょっと、ルイ?」
私同様ポカンとする隣の男性に、ルイはもう一度同じセリフを言った。
「……あの、席って……?」
どこだろうかと男性が視線を彷徨わせる。
「あっちだ」
「……あっち?」
「ファーストクラスだ」
「――ファーストクラス!?」
驚いて目を瞬かせる男性の腕を掴んで立たせる。
「この席だ」
そして、半券を手渡した。