それは危険なラブミッション
「い、いいんですか?」
「悪いが、そうしてもらいたい」
「……分かりました」
棚からぼた餅。
まだ状況の半分も呑み込めていなそうな男性は、手荷物をまとめるとファーストクラスの方へと歩いて行ったのだった。
「どうしてわざわざエコノミーに?」
「エコノミーの狭さというやつを体験したくなっただけだ」
ちょっと嫌味だ。
ルイの長い足は前のシートの背もたれスレスレ。
リクライニングも満足にできない。
口にこそ出さないけれど、きっと座ってすぐに後悔しているだろう。
そう思うと、つい笑みがこぼれる。
「……何だ」
ルイは不服そうに片眉を上げた。
「ううん、何でもない」