それは危険なラブミッション

思いもしない展開が訪れた夕べの私たち。

キスの後、私をしばらく抱き締めたルイは、私を置き去りにして黙ってヴィラへと戻ってしまった。
キスの理由も聞けないまま。
残された私はそこから動けなくて、月の浮かんだプールに立ち尽くした。

ルイにあてがわれたヴィラに入っても、せっかくのその豪華さを堪能する余裕はなく、熱いシャワーを頭から浴びてベッドにもぐり込んだ。
かといって眠れるはずもなく、幾度となく寝返りを繰り返す。

唇に感じたルイの熱、ルイの素肌から感じる鼓動の記憶を振り払えないまま朝を迎えることになってしまった。
そんな私とは対照的に、翌朝会ったルイは、まるで何事もなかったようないつもの調子。
庭のテーブルに用意された朝食を二人で囲んだ。

あれは夢だったのかもしれない。
そう思ってしまうくらい、通常と変わらず。

旅先という非日常が、ルイをそそのかした。
きっとそういうことなんだろう。
問いただす勇気が私にないのは、それをルイの口から聞きたくないから。

もしかしたらルイも私のことを……。
そんな微かな望みを完全に捨てなくてはならないから。

それなら、今はまだ曖昧にしておきたかった。

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