それは危険なラブミッション
「……お客様?」
「西さんっておっしゃる年配の男性です」
――西さん!?
驚いた弾みで、椅子の角に足をぶつけた。
ガタンと大袈裟な音が鳴る。
「……おひとりで?」
「はい、そうだと思います」
ついガッカリしてしまう。
ルイも一緒かと一瞬でも浮足立った自分が恥ずかしい。
店内に出ると、西さんはいつもの如く空気のようにふわっと所在なさげに立っていた。
今朝、到着ゲートで見せた狼狽ぶりは幻覚だったかのように。
「こんにちは」
「今朝ほどは大変失礼いたしました」
「いえ。……あの、何か?」
西さん自身が私に用事があるとは思えない。
「実は、ルイ様からお預かりしたものがございまして」
言いながら、薄くて小さな包みを差し出す。