それは危険なラブミッション

「ちょっと聞きたいことがあるんです」


ドアを閉めて、出入口から少し外れたところに西さんを呼び寄せると、西さんはちょっとした驚きに小さな目を瞬かせた。


「ルイのバリ島行きって、予定されていたことだったんですか?」


私の質問は、西さんの瞬きを更に激しくさせた。


「予定されていたこととおっしゃいますと?」

「……ホテルの視察、ですか?」

「とんでもないことにございます」


思い切って単刀直入に聞いた私に、西さんは即答したのだった。

……視察じゃ……なかった。


「大事な株主総会を控えている最中だったというのに、ルイ様ときたら、突然バリ島へ行くとおっしゃって飛び出したものですから、それはもう慌てました」


さっきまで落ち着き払っていた西さんの鼻の穴が、大きく膨らむ。
そして、それを聞いた私の胸も大きく高鳴った。

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