それは危険なラブミッション

こういうときは、経営者の権限をフルに活用すべし。
しつこく観察する達哉くんの両肩を掴んで回れ右。
店内へと送り出したのだった。

そうして店の奥で書類整理に追われているときのことだった。
携帯が着信を知らせて鳴り響く。

ディスプレイに浮かんだ名前を見て、出ようか出まいか迷ってしまった。
岬さんだったのだ。

左手で携帯を持ちながら、右手の人差し指が躊躇いに空中を彷徨う。

“また連絡するから、その時に莉夏さんの気持ちを聞かせて”

空港での岬さんの言葉を思い出す。

――ええい、出てしまおう。
逃げていても始まらない。
私の気持ちは決まっているのだから。

ディスプレイに指を滑らせ、耳に押し当てた。


「……もしもし」

『よかった。出てくれないのかと思ったよ』

「あ、いえ……」


岬さんの明るい声は、ラーメン屋で夕菜との会話を聞かれたことも、空港での一幕もなかったかのようだった。
デバックでエラーを修正。
そんな風に感じた。

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