それは危険なラブミッション

◇◇◇

ケープホテル最上階のラウンジ。
どこか敷居の高いイメージがあるその場所は、結婚披露宴の二次会の後というノリだけで一度来たことのあるところだった。

一歩足を踏み入れると、バックグラウンドに流れるムーディーなジャズが耳に届いた。
明かりを抑えたモダンな店内。
入ってすぐの真正面にある大きな窓ガラスの向こうには、眼下の夜景が広がっていた。

綺麗だと感激する余裕は、残念ながら今の私にはない。
岬さんが何をしようとしているのかが分からなくて、募るのは不安ばかり。

ルイは何か聞いているだろうかと携帯を鳴らしてみたものの、忙しいのか、その声を聞くことができなかった。

そして、岬さんはもう着いているのだろうかと、店内を見渡したときだった。


「いらっしゃいませ」


男性スタッフが近づいて、軽く頭を下げた。


「あの……岬さん――」

「お席までご案内致します」


岬さんから指示があったのだろう。
最後まで言わずに、「こちらでございます」と右手をかざした。

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