それは危険なラブミッション
「今の話、莉夏さんを傷つけたくて言ったわけじゃないんだ」
「……分かってるつもりです」
岬さんが悪いわけじゃない。
頭ではそう分かってる。
でも気持ちが……。
「頼むから、僕のことを嫌いにならないで……」
岬さんが切実さを滲ませて声を震わせる。
ついさっきまでは自信に満ち溢れていたというのに、そんな姿はどこにも見えない。
岬さんの危うさを見たような気がした。
酷いことをしたのは、この私。
けれど、そんな岬さんを放ってでも、今すぐここを出たかった。
ルイの元に行きたかった。
「岬さん、ごめんなさい……今日は帰らせてください」
「……“今日は”? それじゃ、また会ってもらえる?」
「……ごめんなさい、行きます」
もう会わないというのは、私の身勝手かもしれない。
でも、岬さんの問いかけに頷くことはできなかった。
力が抜けたように岬さんの腕が解かれると、2025号室を飛び出した。