それは危険なラブミッション
やましいことをしていたわけではない。
今日は、新しいソファを1脚ほしいと、お客様として店を訪れていたのだ。
「莉夏さんのお勧めはどっち?」
「どちらもです」
それほどたくさんをお店に置けるわけじゃない。
一応は厳選しているから、どっちがどうとは言えないのだ。
岬さんは、意外と優柔不断な面もあるのかもしれない。
お店が開店して1時間経過しても決められずに、眉間に皺まで刻んで悩んでいた。
「莉夏さん、僕のこと、優柔不断だと思ってるでしょ」
「――別にそうだとは」
「図星って顔だな。だけど違うんだよ。決めちゃったら、この店から退散しないとならないだろう? だから悩んでいるフリをして莉夏さんのそばにいようって魂胆」
嘘なのか本当なのか、岬さんが笑い飛ばす。
それにつられて笑ったときだった。
視界の隅に入った黒い影。
それが、見知ったものに見えた気がして、ガラス製のドアの向こうに目を向ける。