それは危険なラブミッション
「莉夏さんに一体何の用だ」
「……その様子では、まだ知らないらしいな。トップに立つ者だというのに、新聞も読まないと見える」
そう言ってルイは、手にしていた新聞を岬さんへと突き出した。
日経新聞。
それが一体なんだというんだろうか。
岬さんが広げた新聞を私も覗き込んだ。
一面に踊る文字を見て、私も岬さんも「えっ……?」と声を漏らす。
そこには、“東城寺ホテルグループ、フランスの高級ホテルチェーン・アペザーションを吸収合併”とあった。
……吸収合併?
それじゃ……ホテル雅は?
そこも合併した上で、ここにあるフランスのホテルも……?
――まさか、ルイの親族が鳥居さやかさんじゃ飽き足らなくて、フランスのホテルのご令嬢と政略結婚でもさせたの?
頭の中が収拾つかない。
「岬碧衣、使いに持たせたものと同じものを今ここで渡そう」
ルイは後ろに控えていた西さんを呼び寄せると、何やら封書のようなものを岬さんに差し出した。