それは危険なラブミッション

達哉くんは何事もなかったかのようにキリリと顔つきを変えたかと思うと


「今日の午後、予定していた荷物が届きました。それから……」


私が不在にしていた間の報告を大真面目に始めたのだった。


この達哉くんも、麻緒ちゃんと同じ25歳。

大学卒業と同時にどこへも就職せずに放浪の旅に出た彼は、私がバリ島へ仕入れに行ったときにたまたま知り合い、帰国後そのままここで働くことになったという奇妙な経歴の持ち主だ。

短髪をツンツンに立たせ、切れ長の目を持つシャープな顔立ち。
放浪するような自由人でありながらも真面目で、雇い主の私が頼りにしてしまっている。

麻緒ちゃんも達哉くんも、今日のようにほぼ一日留守にすることがあっても、安心して任せられる、この店には欠かせないスタッフだった。



「そろそろ閉めようか」


閉店時刻の19時まであと数分。
客足の途絶えた隙を見計らって二人に声を掛けたときのことだった。

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