それは危険なラブミッション
「……ありがとうございます」
「なかなか似合ってるじゃないか」
一歩下がって私を引きで見る。
そう言われれば、相手が誰であろうと悪い気はしない。
けれど、微笑むのも違うような気がして、表情筋を引き締めた。
――そうだ。
大事なことを思い出した。
バッグから封筒を取り出し、東城寺ルイへと差し出す。
「これ、」
「何だ」
「タクシー代のおつりと領収証です」
「さすがは経営者。そういうところに卒がないのはいいことだ」
日本を代表するホテルの経営者と、しがない雑貨屋の経営者では天と地ほどの差がある。
年商何兆円もの規模の経営者から、“さすが”と言われても、嫌味にしか聞こえない。
「だが、それは受け取らない」