それは危険なラブミッション
ガラス製のドアに黒塗りの車が映り込み、それが店の前にゆっくりと停められたことに気付いて、そのまま視線を留まらせる。
「なんかすごい車が停まりましたね」
「リムジンか?」
麻緒ちゃんと達哉くんも、ガラスの向こうを凝視した。
郊外ではないものの街の一等地から少し離れたこの場所に、リムジンのような高級車が用事のあるような店があったかと考えてみたけれど、私には思い当たらず。
珍しい車に気を取られつつ、この店には関係のないことだろうと背を向けると同時に、ドアが開かれた。
「……いらっしゃい……ませ……?」
麻緒ちゃんの戸惑うような声につられて振り返る。
するとそこには、一見して高級だと分かるスーツに身を包んだ30代と思しき長身の男性が立っていた。
少し癖のありそうな髪の毛は黒く、それと同じくらい黒い瞳で涼しげに店内を見渡す。
麻緒ちゃんの様子からも男性の身なりからも、店の前に停められたリムジンから降りてきた人物だろうということはすぐに分かった。