それは危険なラブミッション
何せ、周りを大勢の取り巻きに囲まれているのだから。
かといって、話すことができなければ先に進めない。
お店を守るため……。
お店を守るため……。
念仏のように心の中で唱え、その取り巻きのすぐ後ろに立つ。
その輪の中にいつまでも岬碧衣はいないはず。
きっと、次から次へと渡り歩くに違いない。
一人になるチャンスをこっそり窺っていると、その時がついに来たのだった。
「では、失礼します」
そう言いながら輪を抜けていく岬碧衣にすかさず近づく。
別の方向からは、私と同じように彼に話しかけようと歩いてきた男性の二人連れ。
せっかくのチャンス、逃すわけにはいかない。
足を速めた。
と、その瞬間――
絨毯にヒールが引っ掛かり躓いた私。
――あっ。
手持無沙汰に持っていたワイングラスを弾みで落とし、ガシャンという音が響き渡る。