それは危険なラブミッション
「……岬……碧衣さん……」
知っているくせに、初めて見たようなふりをして名刺を読むと、目の前の彼はニッコリ笑って頷いた。
歯を覗かせた笑顔は、写真よりも好印象だった。
バッグから取り出した名刺を私もそっと差し出す。
「松崎莉夏といいます」
「へぇ、雑貨店を経営してるんだ」
「細々とですけど……」
名刺を見て感心するように言うから、謙遜して答えた。
「――おっといけない。早いところ手配しないと落ちなくなる」
指をパチンと鳴らし、部屋の奥へ入って行く。
そのあとをトボトボとついていくと、ソファセットの傍らにある電話を取り、どこかへ連絡し始めた。
私の部屋が丸ごとすっぽり入ってしまいそうな広いリビングには、扉が3つ。
バスルームにトイレ、それからベッドルームというところだろう。