それは危険なラブミッション
「あの……どうしてですか?」
「あ、そうだったね。突然こんな真似をしたら驚いて当然だ」
自己紹介のどさくさで忘れてしまったらしい。
岬さんは、口元にだけ笑みを残したまま居住まいを正した。
「申し訳なかった」
そう言って、突然頭を下げる。
「えっ……?」
何のことか分からずに茫然としてしまう。
どうして彼が謝るんだろうか。
「キミがつまずいたのは、絨毯のせいだ。ということは、そのドレスの染みはホテルの不手際」
「――それは違います」
私がつまずいたのは絨毯のせいではないし、ドレスを汚したのは私の不手際だ。
「いや、実は、今日のパーティに間に合わせる形であの絨毯は取り換えることになっていたんだ。キミと同じように、他のお客様からも躓きやすいという指摘をいただいてね。ところが、納品トラブルで間に合わなくなってしまって。だから、キミの身に起こった不測の事態は、全て当ホテルの責任ということになる」