それは危険なラブミッション
「すごいじゃない」
自分でも驚くほどのトントン拍子だ。
あの場で私を躓かせてくれた絨毯には、感謝の一言しかない。
あのちょっとした事故がなければ、きっと挨拶する程度で終わっていたに違いないから。
「どんな人だったの?」
「優しくて紳士的でまじめな人」
「何それ。優良物件じゃない」
……だよね。
あの後も、コーヒーをお代わりしながらクリーニングが仕上がるまで一緒にいてくれた岬さん。
他愛もない話をして部屋で過ごしたのだけれど、性格的に嫌なところはまるでなし。
元のドレスに着替えた私をもう一度会場にエスコートして、更には、拒否したにも関わらず、借りたワンピースをプレゼントしてくれたのだ。
「……私、そんな人の縁談を壊してもいいのかな」
政略結婚とはいえ、お互いが了承している話。
恋愛感情から発展した結婚じゃないとしても、あんなに素敵な岬さんなのだから、鳥居さんが気に入らないとも限らない。