遥か~新選組桜華伝~
そんなこと言われたら。
そんな真っ直ぐな瞳で見られたら。
勘違いしそうになるよ。
──沖田さんは私のことが好きなんじゃないかって。
新選組が私に親切にしてくれるのは、遥空に機密を握られているから。
それだけ…。
ただそれだけなのに…。
「遥さん…」
優しく名前を呼ばれただけで胸がきゅーっとなって苦しくなる。
「沖田さん…」
うつむいたまま…握られた手にもう片方の手を重ね、コクンと頷く。
「ありがとうございます」
沖田さんはぱぁあっとひだまりのような笑顔になる。
「……っ」
その表情を見て、私の胸はますます痛くなったんだ。
だって……。
私と沖田さんは生きている時代が違うし……
新選組は幕府、市川家は長州…私達は決して相容れることのない星の元にいる。
そして何より…。
私は知っている。
この先の未来…。
沖田さんが辿る悲しい運命を────。
新選組の本なんて…ドラマなんて…見るんじゃなかった。