遥か~新選組桜華伝~


そんなこと言われたら。


そんな真っ直ぐな瞳で見られたら。


勘違いしそうになるよ。


──沖田さんは私のことが好きなんじゃないかって。


新選組が私に親切にしてくれるのは、遥空に機密を握られているから。


それだけ…。


ただそれだけなのに…。


「遥さん…」


優しく名前を呼ばれただけで胸がきゅーっとなって苦しくなる。


「沖田さん…」


うつむいたまま…握られた手にもう片方の手を重ね、コクンと頷く。


「ありがとうございます」


沖田さんはぱぁあっとひだまりのような笑顔になる。


「……っ」


その表情を見て、私の胸はますます痛くなったんだ。


だって……。


私と沖田さんは生きている時代が違うし……


新選組は幕府、市川家は長州…私達は決して相容れることのない星の元にいる。


そして何より…。


私は知っている。


この先の未来…。


沖田さんが辿る悲しい運命を────。


新選組の本なんて…ドラマなんて…見るんじゃなかった。



< 106 / 276 >

この作品をシェア

pagetop