遥か~新選組桜華伝~


「…え?」


顔を上げると…斎藤さんは顔を赤くしたまま、こちらをじっと見つめている。


斎藤さん…


今私のこと″はる″って呼んだ…?


気のせい…?


「聞いてるのか、はる」


気のせいじゃない…!


いつもは名前を呼ぶどころか、目も合わせてくれないのに…。


「斎藤さん…どうしちゃったんですか…?」


「俺はいつも通りだよ」


そう言いながらも、斎藤さんは私の両腕を強く掴んでくる。


いつも通りって…。


斎藤さん…なんか強引だよ…っ。


「なぁ…はる」


じりじりと顔を近づけながら、斎藤さんが甘く囁く。


「どうして平助のことは名前で呼ぶのに、俺は″斎藤さん″なんだ?」


「それは…っ平助くんには名前で呼んでって言われてたから…」


至近距離で見つめられて…思わず顔を逸らしてしまう。


普段の斎藤さんならこんなこと言うはずない…!


酔ってるんだ…!


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