遥か~新選組桜華伝~


みんなの前なのに……。


顔が熱くなっていくのを感じる。


沖田さんは彼らのほうを向いてニッコリ微笑むと


「遥さんも疲れてきたみたいなので、そろそろ僕達はおいとましますね」


私を抱きかかえたまま広間を出ていく。


「おいっ!総司!」


沖田さんの背中越しに永倉さんが叫ぶのが聞こえた。


それでも沖田さんは足を止めることはない。


沖田さん…怖い顔してる。


私が勝手に離れたりしたから怒ってるんだ…。


月が照らす縁側を進んで、あっという間に私の部屋に戻ってきてしまった。


沖田さんは私を畳に下ろし、内側から襖を閉めた。


薄暗くて静かな部屋に二人きり……


「遥さん…」


いつもより低い声が私を呼んだ。


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