遥か~新選組桜華伝~
言いたくても、気持ちがぐちゃぐちゃになって言葉にならない。
それでも。
一秒でも早く沖田さんを安心させたくて…大きな手をぎゅっと握った。
「遥さん…?」
沖田さんが不安そうに尋ねてくる。
「嫌とかじゃなくて…
口づけは好きな人にすることでしょう…?」
顔を上げると…沖田さんが目を丸くするのが見えて…
「…ここまでしても、気づいていないんですか?」
小さな声で問いかけられた。
「気づく…?」
なんの…ことだろう?
首をかしげる私を見て、沖田さんは「はぁ…」と大きなため息をつく。
そして困ったような笑顔を浮かべた。
「あなたって人は…。
人のことを気にかけてばかりで、自分のことは鈍感なんですね」
「ど、鈍感っ…?」
「えぇ、鈍感です」
ぴしゃりと言われて、心にガンッてきた。