遥か~新選組桜華伝~


気づけば沖田さんのことを考えてる。


今は素振りに集中しなきゃならないのに……。


「だめだよ…こんなんじゃ…」


手ぬぐいで口元を隠しながら呟いたとき。


「…お疲れ」


「……っ」


声が聞こえて慌てて顔を上げる。


そこに立っていたのは…斎藤さんだった。


私服姿で片手に小さな包みを持っていて。


プライベートで出かけてきた帰りのようだ。


そっか……。


今日は斎藤さんもお休みの日だもんね。


「お疲れ様です、斎藤…」


あっ。


言いかけて昨日のことを思い出す。


下の名前で呼んでって言われてたんだった…!


「一さん」


「……っ?」


それを聞いた斎藤さんは首を傾げる。


「俺、おまえに″一″って呼ばれてたっけか?」


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