遥か~新選組桜華伝~
「え?
昨日の宴のこと、覚えてないんですか?」
「宴…?」
斎藤さんはピクリと眉を寄せると
「酒を飲まされてからの記憶がない。
もしかしておまえに何かしたのか?」
頭を抱えながら問いかけてきた。
「名前で呼んでって言われただけで…そんな大したことは…」
「いや、自分の酒癖の悪さはわかっている。
悪かった。迷惑かけただろ?」
私の言葉を遮り、申し訳なさそうに目を伏せている。
斎藤さんこそ……。
あんなにお酒を嫌がってたんだもん。
酔った姿を見られて、嫌な思いもしているだろう。
けれど……。
「迷惑じゃないです。
むしろ…お話できて、私は嬉しかったです」
「え…?」
素直な気持ちを告げると、斎藤さんは怪訝そうな顔で、首の後ろに手を当てている。
「別に初めて話したわけじゃないし、これからも話せるだろ?」
それが当たり前みたいな言い方。