遥か~新選組桜華伝~


うそ……。


斎藤さんが笑ってる……。


今まで一度も見せてくれなかった笑顔。


それだけで嬉しさがこみ上げて……


「もちろんです、一さん!」


私まで笑顔になっていたんだ。


「ありがとな、″はる″」


斎藤さんはふっと微笑むと、私の前に持っていた包みを差し出した。


薄茶色の竹の小さな包み物。


「これは…?」


「やるよ。元々おまえのために買ってきたものだから」


私の手に包みを置くと、斎藤さんは玄関へ戻っていく。


なんだろう……?


そっと紐を解くと、中から出てきたのは……


「みたらし団子…!」


巡察に同行したときに、斎藤さんが好きだと言ってた奴だ。


話したこと…覚えててくれたんだ…。


斎藤さんがくれたみたらし団子は、今まで食べたどのお団子よりも美味しかった。


食べちゃうのが勿体なくて、1時間くらい眺めていたことは内緒の話……。


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