遥か~新選組桜華伝~


キョロキョロと辺りを見回していると……


「沖田君なら、そこにいますよ」


井上さんが指さしたのは、少し離れた場所にある桜の木の下。


そこに座って、遠くの花見客を見つめている。


氷りついた目……。


沖田さん、どうしたんだろ?


「総司のやつ、あんな所で何してんだよ」


平助くんは眉をひそめながら呟くと


「まぁいいや。
遥、食べ終わったら、これ総司に持っていってよ」


お団子をもう一本差し出してくる。


「わかった。届けてくるねっ」


私は小走りで沖田さんの元へ向かった。


「沖田さん!」


桜の木の向こうの背中に声をかける。


「遥さん……」


振り返りながら、沖田さんは答えると……


「両手にお団子ですか?
遥さんは意外と食いしん坊なんですね」


クスッと笑った。


< 138 / 276 >

この作品をシェア

pagetop