遥か~新選組桜華伝~
キョロキョロと辺りを見回していると……
「沖田君なら、そこにいますよ」
井上さんが指さしたのは、少し離れた場所にある桜の木の下。
そこに座って、遠くの花見客を見つめている。
氷りついた目……。
沖田さん、どうしたんだろ?
「総司のやつ、あんな所で何してんだよ」
平助くんは眉をひそめながら呟くと
「まぁいいや。
遥、食べ終わったら、これ総司に持っていってよ」
お団子をもう一本差し出してくる。
「わかった。届けてくるねっ」
私は小走りで沖田さんの元へ向かった。
「沖田さん!」
桜の木の向こうの背中に声をかける。
「遥さん……」
振り返りながら、沖田さんは答えると……
「両手にお団子ですか?
遥さんは意外と食いしん坊なんですね」
クスッと笑った。