遥か~新選組桜華伝~
彼のペースに乗せられてるってわかっていても。
嫌じゃない。
嫌じゃないんだよ。
「ばか……」
素直になれないから、代わりに沖田さんの着物の袖を掴む。
と、彼はふわりと微笑んでくれた。
そのとき。
「おいガキ。何ぶつかってんだよ。
ちゃんと前見てんのか!?」
ドスのきいた声が聞こえて、そちらを向くと。
花見客で溢れる並木道で、刀を持った浪士が小さな男の子を囲んでいるのが見えた。
「ご、ごめんなさ……」
「聞こえねえなあ?もっとちゃんと謝れよ」
「うぅうっ」
刀を見せながら威嚇する浪士に、男の子は泣き出してしまっている。