遥か~新選組桜華伝~
「そんなことどうでもいい。刀をしまえと言ってるんだ」
沖田さんが恐ろしい目で浪士を睨みつける。
「──嫌だと言ったら?」
「ならば、力づくで言うことをきかせるだけだ」
沖田さんは握った鞘から、左指で少しだけ刀を抜いて体勢を整える。
「言うじゃねえか!幕府の犬が偉そうな口きいてんじゃねえよ!」
大声で叫んで、浪士は沖田さんに向かっていく。
「お兄ちゃんっ!」
男の子が泣きながら、沖田さんへ手を伸ばす。
近づいたら危ない…!
私は彼の元へかけ寄ると……
「大丈夫」
後ろ肩にそっと手を置いて、微笑みかけた。
「沖田さんは…お兄ちゃんは負けたりしない。
必ずあなたを守ってくれるわ」
「ほんとに…?」
私は大きくうなずいて、男の子を背にかばうように立つ。
そしてもう一度沖田さんに視線を移した。