遥か~新選組桜華伝~


「………ふぅ…」


沖田さんは静かにため息をつくと、刀を鞘に収め、こちらへ歩いてくる。


「沖田さん……!」


走り寄って彼の両腕を掴む。


顔を上げると、氷りついた沖田さんの目が穏やかに変わった。


良かった……。


いつもの沖田さんだ……。


「二人とも怪我はありませんか?」


「はい…。沖田さんのおかげで私もこの子も無事で……」


言いながら後ろの男の子に視線を移す。


「え……?」


私は自分の目を疑ってしまった。


だって……。


「は…ぅ…あ…っ」


男の子は震えながら、後ずさっている。


まるで化け物でも見ているかのような顔。


沖田さんはあなたを助けるために戦ったんだよ……。


それなのに……怖いの?


「きゃああっ!弥彦(やひこ)!」


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