遥か~新選組桜華伝~
え……?
彼はうつむいたまま首を横に振ると
「行きましょう」
それだけを言って、私の手を引いて歩き出す。
「沖田さん…!?」
呼びかけても一切振り返らず、ずんずんと歩いて行ってしまう。
後ろ目に蔑んだような目を向ける人々が見えた。
川原を出て、人気のない並木道を歩いていく。
「何も…言わないんですか…?」
「何がです?」
「沖田さんは正しいことをしただけなのに……」
新選組を人斬りと決めつけて、誰一人目の前の沖田さんを見てくれないんだ。
「…あんなの、酷すぎます」
悔しくて、悲しくて、涙が溢れてくる。
手を引かれながら、零れる涙を着物の袖で拭っていると。
「遥さん」
沖田さんが、一本の桜の木の下で足を止めた。