遥か~新選組桜華伝~


「僕のために怒ってくれてありがとうございます。
でも、これでいいんです」


なだめるような口調からは、少しの怒りも感じない。


「どうして…?」


人を助けたのに、悪人呼ばわりされてるんだよ……?


「刀無くして新選組はありえない。

皆さんの言うとおり、僕らは人斬りなんです」


そう言って、沖田さんは木の枝のほうへ手を伸ばす。


すると、木に止まっていた小鳥が、沖田さんの手に止まった。


「でも…刀があったからこそ、あの子を守れた。

新選組として、町の平和を守るお役に立てたんです。

それだけで十分じゃないですか」


「沖田さん……」


「だから遥さんが泣く必要なんてこれっぽちもないんですよ」


沖田さんはふっと笑うと、手を空にかかげる。


バサッ


鳥は羽を大きく広げながら、空へと飛び立っていく。


沖田さん……。


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