遥か~新選組桜華伝~


でも……。


「お礼を言うのは私のほうです……」


未来は胸にしまって置こうと思った。


この痛みを背負うのは、私だけでいい──。


うつむいたまま、着物を掴む手にきゅっと力をこめる。


「沖田さん、ありがとうございます」


「え…?」


「国の未来のために生きてくれて。

新選組のような優しい人達が頑張ってくれたから、

私は幸せな時代に生まれることができました」


精一杯の笑顔を作って、彼を見上げた。


堪えていた涙が一筋、溢れて頬を伝っていく。


沖田さんの生き方を見て、彼の優しい腕に抱きしめられて、気づいてしまった。


未来へ帰ること以上に大切なものに……。


たとえ彼らの運命が


桜のように儚く散ってしまうものであっても。


せめて、傍にいたい。


その最後の瞬間まで────。


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