遥か~新選組桜華伝~
「ほんとですか?行ってみますね」
沖田さんはパタパタと中庭のほうへかけていく。
その背中を見送ると、近藤さんは私のほうを向いた。
スッ
前に差し出されたのは、先程の桜の枝。
「これは、君からトシに渡してくれないか?」
「土方さんに……?」
どうしてだろう?
首を傾げていると、
近藤さんは「実はな…」と頭の後ろをかいた。
「桜の枝の話はトシの提案なんだ。
総司や遥を花見に行かせてやりたいって」
「え…」
目を見開く私を見て、近藤さんは微笑みながら話を続ける。
「忙しい君達に、少しでも安らぐ時間を与えたかったんだろう。
まぁ、あのトシの性格だ。
自分から言うのは気恥ずかしかったんだろうな」
ちょっとだけ白い歯を見せた。