遥か~新選組桜華伝~
「えっ…ちょ…!」
知らないフリするつもり!?
「待ってください!!」
背中に向かって叫ぶと、ゆっくりと振り返った。
「何だよ…」
せめてお礼くらい言わせてほしい。
「今日はありがとうございました。
とても楽しかったです」
いきなり頭を下げる私に、土方さんがため息をつくのが聞こえた。
「近藤さんのやつ。
余計なことを喋りやがって……」
目を閉じながら、ばつの悪そうにに額に手を当てている。
よく見れば…目の下にクマができてる。
目を開けてるときは、眼力が強すぎて気づかなかったけど……。
土方さんも休みなく働いてるんだ……。
「私達のことを気遣ってくれてありがたいですけど。
土方さんも少しは休んでくださいね」
「俺は別に疲れてねえよ」
強がる言葉とは裏腹に、土方さんの肩がちょっとすくんだ。