遥か~新選組桜華伝~


「ありがとう…ございます」


すごくすごくうれしかった。


私がここにいるのが当然、という風に言ってくれたことが……。


涙を堪えていると、土方さんは無言で手ぬぐいを渡してくれる。


そして彼は背を向けると、中庭から見える空を見上げた。


すっかり藍色に染まった空に、浮かぶのは白い三日月。


「遥……」


月明かりが、土方さんの後姿を青く照らしている。


「ずっとここにいるんなら……。

いっそ俺の嫁になるか?」


「……ぇ」


心臓がドクンと鳴って、上ずった声がこぼれる。


嫁になるかって……プロポーズ!?


なんでいきなり…そんな……。


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