遥か~新選組桜華伝~
六 池田屋事件
*
*
*
*
*
それから2ヶ月後。
元治元年(1864年)6月。
緑の木々を爽やかな風が揺らす、初夏の日。
いつも通りの穏やかな今日、新選組の歴史で最も有名なあの事件が起こるなんて。
この時の私は夢にも思っていなかったんだ。
昼下がりの中庭にて……。
「遥さん」
素振りをしていたところを、後ろから声をかけられた。
「沖田さん?」
「ちょっとこちらへ来てくれませんか?」
ニコニコと満面の笑みで、寝室のある屋敷を指さしている。
沖田さんが笑っているのはいつものこと。
だけど今日は一段と楽しそうで……。
どうしたんだろう?
「わかりました」
首を傾けながら、沖田さんの後に続いて屋敷に入ると……
永倉さん、原田さん、斎藤さん、藤堂くんが奥の部屋で待ち構えていた。