遥か~新選組桜華伝~


「はぁあ……」


目の前の豪華な着物を見つめ、ため息をつくしかなかった。


でも……。


「遥ちゃん、絶対見違えるほど美人になってるだろうな」


「何言ってるんだよ、佐之助さん!
はるは元々美人だろ?」


襖の外から、原田さんと平助くんが話しているのが聞こえる。


断れる雰囲気はどこにもない。


うぅう……。


諦めて着るしかないよね。


もう一度小さくため息をつくと、私はかけてあった着物を手に取った。


15分後──。


「着て…みましたけど」


襖をそっと開けると、皆が一斉にこちらを向く。


こんな可愛い恰好をするのは初めてで。


見せるのは、やっぱり恥ずかしいよ……。


うつむきながら、両手をぎゅっと握りしめていると


「おぉーっ!」


大歓声が聞こえた。


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