遥か~新選組桜華伝~
「沖田さん……!」
「ふふ。
遥さんが可愛すぎて、このまま僕が連れ去っちゃいたいですね」
ひざまづいて、取った手をギュッと握る沖田さん。
「なに言ってるんですか。
土方さんに怒られちゃいますよ」
「平気ですよ。
こんな可愛い遥さんを、独り占めできるのなら」
私を見上げ、クスッといたずらっぽく微笑んだ。
そのとき。
「…俺に逆らおうとはいい度胸じゃねえか、総司」
恐ろしい物言いに体が強張る。
「土方さん。さすが行動が早いですね」
入口を振り返りながら、沖田さんが肩をすくめた。
「テメェに抜け駆けされたくないからな。
……と、冗談はこのくらいにして。
二時間後に立つぞ」
土方さんが瞳を尖らせる。
「……!」
一瞬にして、場の空気が変わったー…
「すぐに準備する」
冗談が消え、皆が深刻な表情で次々と部屋を立ち去る。
な、なに……!?