遥か~新選組桜華伝~
後を追って部屋を出ようとすると、後ろから腕を掴まれた。
「見違えたじゃねえか。馬子にも衣装ってところか?」
「土方さん……」
冗談っぽい口調とは逆に、私の腕をがっちり押え、行かせてくれない。
廊下を見ると、もうそこには誰の姿もなかった。
「どうした。何を気にしている?」
「何をって…。皆さん、これから何処へ行くんですか?」
いきなり怖い顔して、部屋を出ていくんだもん。
おかしいと思うに決まってるじゃん。
「はっ、テメェそれ聞くのかよ?
男がそんな必死になるような所なんて、すぐわかんだろ」
「え……」
まさか、何処かで重要な任務があるとか……
「遊郭だよ」
「ゆ……」
遊郭!?